「ないならば、自分で作ろう!」と一念発起、現役美容師が分析化学応用学科に入学し研究を続け、本気で作った「ヴィーガンコスメ」

公開日: 2023.10.22

インタビュー

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現役美容師・ヘアカラリストが、世界で最も歴史のある「ヴィーガン」協会で、イギリスのヴィーガン認証を取得したホンモノのヴィーガンコスメに注目が集まっている。

サトウキビを酵母菌で発酵させた主成分を使った「夜に使う、洗い流さないヘアトリートメント」は、こどもにも使えるやさしさをもちながら、現役美容師さんの視点が集結!きれいな髪を作るための必要成分と厳しい基準を敢えて選択した理由について、BRILL HAIR / ブリルヘアの生みの親、福岡宏信氏に伺った。

どんな背景があり商品開発「BRILL HAIR / ブリルヘア」がスタートしましたか。

 
ロンドンの美容室に就職し、ヘアカラーリストに。その後、日本に戻り化粧品会社ホーユーに勤めた後、 起業しロート製薬の美容室運営、ロレアルのブランディングに携わるなど 常に「髪」と「化粧品」の世界で働いてきました。
その後、子供が生まれ、お風呂担当になり、自分がいいと思って使っていたシャンプーやトリートメントが娘にとって刺激があったり、マイナスに感じることがでてきました。初めて肌につけるモノがなんでできているか?を詳しく調べるようになり、安全、自然・環境、社会へ配慮したヘアケア商品を求めるようになりましたが、希望を満たすものはなかなか見つかりませんでした。

「無いならば自分で作ろう!」と一念発起し、分析化学応用学科に入学、猛勉強。


勉学と同時に製品研究をスタート。処方技術は大手メーカーから技術支援を受け、環境、安全、美の中で、一番最初に取り掛かったのは安全性でした。
天然成分だから、化学成分だから良い悪いではなく、 原料は科学的に検証された優しい成分、裏付けがあるもの、疑わしきは使わず、透明性あるものを選択したかった。ただ、検証された成分をどう見つけるか?が大きな課題で開発はなかなか進まず・・・。

業界紙の記事に衝撃を受け、自分たちのスタンダートはどこに置くのか?を決める。

開発がなかなか進まないときに、たまたま見たWWDの記事 「化粧品は成分にも注目する時代へ クリーンビューティトレンドを後押しする5つの海外アプリ」 が衝撃を受けました。そこでは、世界には誰でも化粧品の「安全性」、原料や成分の機能、リスク、事例などを手軽に評価できるアプリやデーターベースがあることを知りました。

カナダの「Think Dirty」、アメリカの「EWG's Healthy Living」、フランスの「Yuka」のアプリでは バーコードをスキャンすると安全性や危険とされる化粧品成分を簡単に確認できる。 疑わしもの(人や自然にとって安全と証明されていない成分)は使用せず、 さらに厳しい基準と透明性がそこにはありました。
 
そこで私が作るブランドでは、疑わしもの(科学的に人や自然にとって安全と証明されていない成分)は使用せず、より厳しい尺度をもち、それを自分たちのスタンダードにしました。その後、作る製品はアウトバストリートメントと決定し、原料探しの旅へ出かけました。

原材料を見つけるため、世界18か国で探し回った2年間

 欧州化学品庁(ECHA)、コーシング(CosIng)、EWGの安全指数を基準に、世界中の原材料を探し回りました。(イギリス、フランス、チリ、アメリカ、オランダ、ドイツ、オーストラリア、インド、パキスタン、ブラジル、オーストラリア、エジプト、ポーランド、ウクライナ、ベトナム、インドネシア、チェコ、日本。)
 
ブラジルのサトウキビ農園を見つけたときに、素晴らしい環境化で大切に扱われているサトウキビエキスとの出会いがありました。

こちらの農園は、働いている方にも優しく(最低年齢15歳以上、賃金(国の最低賃金より同等又はそれ以上)で、環境破壊に繋がらないよう農地は管理され、本来は捨てられる搾りかすを製造工程の代替燃料として利用しているなど、とてもエシカルな原料です。こちらの原料は、EUのコーシング(CosIng)でも安全確認ができ、メイン成分として決定。その他、製品に使用する23成分も同様にEUの基準に合わせて選択し、その後、すべて植物由来の処方で完成していることから英国ヴィーガ協会に申請、2021年10月31日に承認をいただきました。

 
世界のいいところ、日本のいいところを上手に取り入れながら製品が完成しました。

「BRILL HAIR / ブリルヘア」のこだわりポイントを教えてください。

安全、エシカル、環境、美の4つの透明性やエビデンス、第三者機関からの分析をもつ製品と、現役美容師でもあり、分析化学応用学科卒、化粧品総括製造責任者、化学分析技能士の暑苦しい開発者、福岡が本気で作っています。
 
"SAFETY"
開発において一番最初に始めたことは、アレルギーやアトピーのリスクを減らすため、ネガティブな成分を取り除くことでした。
世界でも最も厳しい化粧品規制を実施しているEUの禁止成分※1は「1637」。
私たちが禁止している成分は 「2400」。

この厳しい基準は、 こどもにも使える優しさを第一に考えた私たちのスタンダードです。
ECHA(欧州化学品庁)、 FDA(アメリカ食品医薬局)、国際化粧品規制2021(薬事日報社)
 
"ETHICAL"
学生時代の卒論は「菌類とオーガニック化合物」がテーマ。
「菌って、小さな微生物なのに、味噌や納豆など、豊かな食を支えて、力強いなぁ」
「植物は様々な用途として古来から使われているものがあるけど、どうなんだろう」
という想いがありました。

バラバラにあった、この2つをくっつけて見ると、
何百年、何千年も 続く可能性を秘めたヘアケアが出来るのでは?そんな気づきから研究が始まりました。
その結果、酵母菌×植物の力※1を組み合わせて天然由来成分94%、動物性由来成分を使わずヴィーガン処方に成功し、
2022年10月、英国ヴィーガン協会より認証取得。
※ 植物由来成分
 
"SUSTAINABILITY"
ラベルがない真っ黒な硝子瓶、化粧箱がないパッケージ。
環境を考えた私たち商品の晴れ姿です。

2050年には海洋中のプラスチックごみの重量が魚の重量を超えるという試算※2もあり、
プラスチック製品のごみ問題が世界中で年々深刻化しています。
私たちは脱プラや使用後のセカンドライフも考え、
容器を硝子瓶にしました(プラスチックフリー91%、マイクロプラスチックフリー100%)
可能な限りプラスチックフリーなアイテムを選択したり、
使用する場合も最小限に留めています。

2023年2月、サステナブコスメアワード「審査員賞ニューフェイス部門」を受賞。
※2 ENV(環境省)、WWFジャパン

 
“容器は、もう使い捨てなくていい”、環境に優しいものを追求するために、
使い捨て容器ではなく耐久性の高い硝子容器に入れて販売しています。


使い終わった硝子容器は、私が運営する美容室の店舗(金沢店、大阪店)で回収され、
洗浄し繰り返し使い、ごみを出さない購買・消費システムの展開に取り組んでいます。
 使い終わった後、回収・洗浄時にゴミを出さないこと、節水に繋がることを考えラベルをなくしました。

化粧箱をなくし、発送する際の緩衝材になる素材をパッケージがわりにし、
封をするシールをラベルにして無駄のない工夫をしました。

(使った容器は自分できれいに洗わずに返却してOK)酒屋さんや牛乳屋さんが容器を回収して何度も使うように、
空き容器はごみではなく資源になると考えました。
そうすれば一度きりで使い捨てられることはなく、地球に優しい循環型の仕組みを構築。


容器は、太陽光(可視光線)を通さない黒いガラス瓶。
チェコの南モラヴィアにある創業1827年の老舗ガラス工場で作られています。
注ぎ口に一部プラスティックを使用していますが、容器全体で91%プラスチックフリーです。


防腐効果とつめかえ用のパウチ容器。
光や温度などの変化でも状態を維持できるか?

安全性や環境のことを考えて合成防腐剤は使用しない。
だけど防腐作用や抗菌作用のある天然成分を配合して
総合的な防腐効果を高める。

あれを入れると簡単に保存は高くなるが、、、
通常の製品と同じ成分で作ると決めていましたので
大きな課題でしたが、また一つ乗り越えることが
出来ました。
 
“BEAUTY”
優しいだけではない。都産業技研(東京都の試験研究機関)にてエビデンス取得。
さとうきびのエキスを酵母菌で丁寧に発酵してできた発酵美容成分、
甜菜からつくった保湿成分を 中心とした天然由来成分を94%配合した
「夜用流さないトリートメント」 夜寝ている間に髪の内部まで浸透し
ダメージを補修するのが特徴。

1.発酵×植物ブレンドの独自処方配合で、うるおいを与え、保ち、乾燥によるダメージから髪を守り、美しい髪や健康的な髪の構造に着目し、髪のメカニズムにアプローチ。乾燥、ハリやコシ、指通りの悪さなどの髪の悩みに働きかけ、美しい髪へと導きます。


2.毛髪深部への密着浸透処方で、必要な場所へしっかり届きます。
密着浸透処方が、繊維状に張り巡らされる毛髪のすき間を満たし、毛髪深部へすばやくなじみ、成分をしっかりと届けて染み渡ります。


3.ビルドアップしにくいノンシリコン処方使い続けても、毛髪への残留やビルドアップ(硬化)になりにくい。
クリームをつけた瞬間、ミルキーなテクスチャーが髪に溶け込むかのようになじみ、ドライ後はベタつきのないさらりとした髪に整えます。

エシカル・ヴィーガンライフの実現についてどのように考えていますか。

今から30年前にイギリスに住んでいました。スーパーには普通にベジタリアンフードもたくさんあり、卵のパックは紙がほとんど、平飼い、食品や化粧品の量り売り、マーケットには環境や自然に配慮した手作りの化粧品、アップサイクルされた商品も多く、人にも動物にも環境にも優しい社会の中で育ちました。
自分たちの都合で、自然、環境、動物への負荷がかかってはいけないと常に思っており、特に英国ヴィーガン協会に申請時には、成分の配合比率、どの国でどのような手法で原料が作られたかを提出するために、原料起源、末端まで詳しく把握できたこと、認定を得られたことは大きな自信に繋がりました。今後の商品も同様に作っていきたいと考えています。

ブランドとして、取り入れているエシカル事業について教えてください。

・容器の廃棄物が生まれない仕組みを実現。容器(チェコ製)を回収して何度も使うように耐久性の高い硝子容器に入れて販売
・主成分の原料づくりをしているのブラジルの農園では、本来は捨てられバガスを代替燃料として利用し、酵母菌は肥料にしている
・プラスチックフリー91%(キャップのみプラスチック9%)、マイクロプラスチックフリー100%
・化粧箱をなくし発送する際の緩衝材になる素材をパッケージがわりにしている
・天然由来成分94%、動物由来成分不使用、ヴィーガンヘアケア

「BRILL HAIR / ブリルヘア」を通して、実現したい未来はありますか。

現在は協力会社にて製品を作って頂いていますが、自社で工場を作り、基本となる原料を大きな蒸留器から、精油、蒸留水はもちろん、例えば加賀棒茶の製造過程で捨ててしまう葉や茎をよりエキスを生成したり、椿の仲間の茶の木の実からオイルを搾油したり、金沢市内の竹害からバンブーオイル、白山の無用薬栽培のお米を収穫し脱穀後に発生する籾殻からも成分を生成したり、効果や安全を担保しながら、周りにあるいい資源を使って循環させ、自然への負荷を低減して再生するものづくりをしたいです。


きっとたくさんは作れないですが作り手の顔が見えて、お客さんの顔も見ながら、その人の髪に合ったものを作れたら素敵な未来になるなぁーなんて思っています。

Hironobu Fukuoka


ロンドンの美容室に就職し、ヘアカラーリストに。
日本に戻り化粧品会社ホーユーに勤めた後、 起業しロート製薬の美容室運営、
ロレアルのブランディングに携わるなど 常に「髪」と「化粧品」の世界で働いてきました。
 2018年に金沢、2020年に大阪に直営ヘアサロンをオープン。
こどもが生まれたことと直営店オープンをきっかけに 「髪にも環境にも優しい成分で、
髪質に合った商品をつくりたい」と思い立ち、分析化学応用学科に入学。
2022年、卒業と同時に立ち上げたブランドです。
“Brill hair”とは輝くように美しい最高の髪のこと。「うれしく、うれしくて、つい自分の髪を触ってしまう」
そんな “Brill hair”が生まれるヘアケアを お届けします。

https://brillhair.com/

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