今、世界中から注目されるパン職人「大澤秀一」氏がヴィーガンメレンゲを作った理由

公開日: 2023.8.2

更新日: 2023.10.22

インタビュー

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東京・九品仏にある人気ベーカリーショップ「Comme‘N TOKYO(コム・ン トウキョウ)」内にスイーツブランド「Comme’N MERINGUE(コム・ン メレンゲ)」がオープンし、店内で販売されているヴィーガンメレンゲに注目が集まっている。

メインとなる商品は、フランス語で〝卵の王様“という意味の「Oeuf de Rois(ウッフ・デ・ロワ)」。拳よりも大きいメレンゲは、こんなに大きいのに砂糖の量を半分に抑えたやさしい甘みで、卵ボーロとメレンゲの間くらいの食感。甘さのインパクトは控えめだが、一度食べたらやみつきになる理由は日本の風土に合った調理方法で作られ、ベーカリーショップならではのアイディアがたくさん詰まっているからだ。

今回、大澤氏になぜ、ベーカリーショップメレンゲ専門店を作ったのか。またヴィーガン商品を作った理由などもうかがった。

(オーナーシェフ 大澤秀一 氏)

メレンゲ専門店「Comme’N MERINGUE(コム・ン メレンゲ)」をオープンしたきっかけを教えてください。

パンの世界大会終了後に、ほっとしながら街中を歩いていると偶然パリの街中で見かけた色とりどりのショーウィンドウにあった可愛らしいメレンゲ菓子。子供のころに食べていたメレンゲ菓子の思い出やあの頃の感動が記憶がよみがえってきました。その頃、日本では鳥インフルエンザの問題によって起こった卵の高騰化。日々のパン作りで生まれる大量の卵白を何かに生かしたいと気持ちもありそこからが、メレンゲづくりが始まりました。
 
長い間、パンに触れてきたものの、スイーツづくりは未経験。そう簡単にメレンゲスイーツを作れるものではありませんでした。幾度となく試作を繰り返し、口の中でとろける感じを表現するために試行錯誤。同時に、卵が食べられない人にも楽しんでもらいたいとヴィーガンメレンゲの開発をスタートしました。

スタッフのアレルギーがきっかけで誕生した、グルテンフリー専門店も

Comme‘N TOKYO(コム・ン トウキョウ)には、2022年5月にパン好きの新たな選択肢の一つとしてグルテンフリー専門店「Comme‘N GLUTEN FREE(コム・ン グルテンフリー)」もオープンしている。グルテンフリー専門店をオープンしたのもスタッフがパン作りに専念するあまり、小麦アレルギーになってしまったことがきっかけだったという。

(グルテンフリー専門店では、ヴィーガン対応の製品も)

世界の舞台でパン職人として技を競ってきた大澤氏、そして自身も小麦アレルギーに苦しんだ経験をもつスタッフの佐藤氏を中心に、素材や製法まで見直しグルテンフリーの可能性が広がる魅力ある商品たちが並ぶ姿は、圧倒的です。
小麦アレルギーのお子様の食の選択肢が増えたことやこれまで小麦を避けるために食事は引き算として生活をしていた方が、“選べるものが沢山あって嬉しい!食事が楽しい!”と泣きながら喜んでくださるお客様もいらしたとのことです。
 
グルテンフリー専門店をオープンしなかったら、ヴィーガンへのチャレンジは絶対にしなかったという大澤氏。

ヴィーガンメレンゲ誕生までの道のりについて教えてください。

グルテンフリー専門店をオープンしたことで、子供たちに食べてほしいものが沢山できました。メレンゲの開発中も卵アレルギーの方にも食べてほしい!そんな想いがあり開発に着手している中で、「YUMGO(ユンゴ)」と呼ばれるフランス生まれの代替卵白との出会いがヴィーガンメレンゲ誕生のきっかけになりました。

YUMGOは、ポテトプロティンやアカシヤ由来の食物繊維のファイバーで作られており、卵白のようにたてられるのが特徴で製菓やパン作りをはじめとした調理に使用できることで世界中から注目を浴びています。すでにヨーロッパでは沢山のプラントベース製品に使用されています。

https://en.yumgo.fr/

こちらのYUMGOを使用したヴィーガンメレンゲには、「玄米」や「お米」などフレーバーの他、砂糖の割合を減らすために、枝豆をフリーズドライにしたり、小豆パウダーを使用するなど和素材を積極的に採用しています。

ヴィーガンクロワッサンを使用した、ベーカリーならではのアレンジも

(ヴィーガンクロワッサンに、たっぷりとメレンゲをトッピング)

“いたずら好き”という意味の「エスピエーグル・ヴィーガン」は、ヴィーガンクロワッサンをしっかりと乾かしてから、たっぷりメレンゲをのせて再度焼いたもの。ラスクのようにザクザクとした食感と軽さが魅力的な商品です。

割りながら、コーヒーにつけて食べるのもおすすめ

ヴィーガンスイーツを通して実現したいことは

”ヴィーガンを楽しめる”ヴィーガンライフの手伝いをできたらいいなと思っています。コム・ンのメレンゲは、どんな人にもそっとより添ってくれる自然な美味しさと自由な組み合わせが魅力的だと思っています。ベーカリーならではの新しい提案を楽しんでいただけたら幸いです。

【店舗情報】
店舗名:Comme'N MERINGUE(コム・ン メレンゲ)
住所:東京都世田谷区奥沢7-18-5 1F
「自由が丘駅」徒歩10分、「九品仏駅」徒歩1分
年中無休:7:00-18:00

Instagram:https://www.instagram.com/comme_n_mg/

https://commen-mg.jp/

Owner Chef Shuichi Osawa


群馬・高崎のベーカリーを営む家に生まれる。幼いときからパンがあたり前のように身近に
ある環境に育ち、自ずと自身もパンの道へ。2012年より、神戸「Ca marche」西川功晃シェフのパン職人として姿勢や考え方に感銘を受け、師事。その後高崎市へ戻り、自身のベーカリー「Comme‘ N」を立ち上げる。実店舗は駐車場に建てられたプレハブ小屋という限られたスペースながら、2019年第7回「モンディアル・デュ・パン」世界大会に日本代表として出場。6部門のうち3部門を制し、日本人初の総合優勝を成し遂げ、見事世界一の称号に輝いた。

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