NOT A HOTELなどを手がける建築家がなぜサプリメント? 想像を超える谷尻誠の頭の中

公開日: 2025.12.16

インタビュー

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「NOT A HOTEL」や「DAICHI」など自然と建築をブリッジさせるプロジェクトを手掛ける建築家・谷尻誠さん。建築のみならず、建築コミュニティや不動産の運営などゼロからイチを生み出す起業家としても注目を浴びる存在。このたび、新著『建築家で起業家の父が息子に綴る「人生の設計図」』が発刊されます。
今回、プラントベースメディアである&kittoに初登場いただいたのは、無添加サプリメントブランド「yoyo(葉養)」をスタートしたから。
株式会社マッシュビューティーラボの「健やかで美しいわたしに」をコンセプトにしたセレクトショップ「Biople(ビープル)」の毎年大人気のイベント「Biople FES TOKYO 2025」にyoyoが初出展。しかも、谷尻誠さんみずから「リアルな声を届けたい。聞きたい」と店頭で接客、トークショーも開催されました。


毎年大人気のイベント「Biople FES TOKYO 2025」に谷尻誠さんのサプリメントブランドyoyoが初出展。

谷尻誠さん、吉田愛さん率いるSUPPOSE DESIGN OFFICE の代表作のひとつ。16万坪の牧場で大自然のパノラマを楽しめる「NOT A HOTEL NASU MASTERPIECE」。「できたてほやほやみたいなつくり方はあまりしない。完成したときからエイジングされているかのような、新築に見えないものがいいと思っている」

本日新著発刊、&kitto初登場! 谷尻誠さんインタビュー

「NOT A HOTEL」や「DAICHI」など自然と建築をブリッジさせるプロジェクトを手掛ける建築家・谷尻誠さん。建築のみならず、建築コミュニティや不動産の運営などゼロからイチを生み出す起業家としても注目を浴びる存在です。本日、新著『建築家で起業家の父が息子に綴る「人生の設計図」』が発刊されます。
今回、プラントベースメディアである&kittoに初登場いただいたのは、無添加サプリメントブランド「yoyo(葉養)」をスタートしたから。
株式会社マッシュビューティーラボの、健やかで美しいわたしに”をコンセプトにしたセレクトショップ「Biople(ビープル)」の毎年大人気のイベント「Biople FES TOKYO 2025」にyoyoが初出展。しかも、谷尻誠さんみずから「リアルな声を届けたい。聞きたい」と店頭で接客、トークショーも開催されました。

「キャンプ以上、別荘未満」がコンセプトで、多少の不便を楽しむ会員制貸別荘「DAICHI ISUMI」。谷尻さんは週末こちらで過ごし月曜早朝に出発して息子さんは学校、谷尻さんは仕事へ向かうこともある。

――意外なサプライズ。なぜBiopleに谷尻さん?

料理家であり発酵食品が好きな妻がBiople愛用者で。僕自身はおばあちゃん子だったので畑でとれた野菜の漬物やおばんざいがからだにしみついていますし、食のおかげで調子が悪いと思うことが少ない。サウナでからだを巡らせることも大好きです。3年ほど前から北海道の美瑛町で村づくり、畑づくり、その原点となる土いじりを息子と楽しむ日々です。ここでは天然のサプリメントを吸収しているような感覚をいつも得られる大切な場所。とはいえ土や菌が相手だと試行錯誤、エラーばかりで、朝から晩までクワを振り下ろしています。息子は、東京では誰かがつくったもので遊んでいる。けれど美瑛では自然にあるもので工夫して遊んでいますね。
Biopleとのご縁は、ルミネ新宿店と三軒茶屋店の店舗設計に携わったことからです。主役はあくまで商品。それらが並んではじめてお店になるので、お店を作り込みすぎないように意識しましたね。

ユーグレナと共同開発したyoyoは2種。普段使いのベースとなる野菜サプリメントには「Everyday green」。すべて有機のモロヘイヤ、ほうれん草、ケールに、タモギタケ、ハト麦若葉、ヤエヤマクロレラを添加物をつかわずかためた。お試し7包 ¥980、30包 ¥4200/yoyo

――なぜ建築家がサプリメントを?

からだをつくるのは「食」だからです。
自然は好きだし、広島出身の僕は小さい頃から恩恵にあずかってきました。今、北海道の美瑛で畑仕事をして野菜をつくることまで進みました。この美しい村だけでなく、日本の美しい自然を継続的に循環させるにはどうすればいいか? 愛情をこめて農家さんが育てた野菜のロスを防ぐには? そう考えたとき、未来のための「リターニングプロジェクト」を立ち上げ、その一環としてサプリメント開発につながっています。今回は出雲の農家さんの野菜を、もちろん無農薬で、負担をかけない低温乾燥、添加物がないものをつくりたかった。僕自身、本業が建築家なのでyoyoで生計をたてる必要がない。とことんよいものを追究できます。それでも2年かかったのは、無農薬をきちんとつくる段階まではできても、添加物なしでかためるには難しく試作を繰り返しました。

もうひとつ、妻が日頃、飲む日焼け止めサプリメントと野菜不足を補うためのサプリメントを2種摂っていたんですね。美容と健康はそもそもつながっている。からだに取り込むものが美しかったら健康になるのではないか、というシンプルな考えから、yoyoには材料をとことん極めた、ベースをつくる野菜のサプリメント「Everyday green」と、日差しに負けないからだをつくる「clear bright」を用意しています。

愛用してくださる方には「ニキビができにくくなった」「外食続きでお通じが悪くなることもあったがそれが減った」「野菜不足を補える」といった感想も届いています。
僕自身、意識しないと野菜不足になりがちです。朝はトースト、昼はお蕎麦、夜は会食、しかもビールが好きでお腹がぽっこりすることも。酵素が減っているのかな、分解する能力が減っているのかな、とそういうときはyoyoを多めに摂っています。

緑の野菜をベースに紫外線ダメージが期待できるニュートロックスサン(シトラスエキス、ローズマリー)を1包に250mg配合。日焼け止めなどで不足しがちなビタミンDを補うヤエヤマクロレラもin。「Clear bright」。お試し7包 ¥2200、30包 ¥8800/yoyo

――どんな想いをyoyoに込められましたか?

よき生活者がよきデザイナーなんですね。つくる側が豊かな生活をしていないとよいものはつくれない、という考えが根底にあります。では、よき生活とは? と自問自答したときに、「ストレスを感じる、いやなことはやらない」だったんです。
昨年、僕は50歳を迎えたタイミングで、「やりたいことを選んでいく人生」にシフトしました。
今では順風満帆だと言ってもらえますが、中高生の頃は勉強がきらい、というよりする意味がわからなかったからバスケットボールだけに熱中していました。小学1年生の頃に母が急死し、婿入りした父と祖母に育てられた家は五右衛門風呂で古いことがコンプレックスだった。その反動で建築に興味を持ち、専門学校に進みました。そうしたらはじめて勉強がおもしろいと思えて。建築業界で、大学卒でも有名な建築事務所出身でもない僕は必死で何十年も駆け抜けてきました。
ようやく今、「やらされているのではなく、いかに心が動くか」を選ぶ指針とすることができています。
yoyoのロゴは息子が描きました。yoyoは葉養とも書き、植物の葉は光合成をして酸素をひとに与えるのが仕事ですよね。役立つ人間になってほしい、そんな想いも込めて、息子に託しました。

12/18発刊の新著は8冊目。『建築家で起業家の父が息子に綴る「人生の設計図」』三笠書房

――本日発売の新刊は息子さんへのメッセージを寄せた、人生を楽しむための一冊です。

これまで数冊、本を出版させてもらっています。あらたに本を、というつもりはなかったのですが、編集者の方に「息子さんが16歳になったときに贈る本にしてみては」と言われて1年かけて綴りました。
文句をいいながら仕事をしているならやめな、と自分では思っています。ものごとは自分で決めて進めるべきもの。ビジネスパーソンはもちろん、起業や新プロジェクトを考える方、親として、地球にいるひとりとして、いろいろな視点で読んでいただければ嬉しいです。

――谷尻さんはどんな16歳でしたか?

高校一年生、バスケ三昧でしたね。バスケにしては背が高くはないので、どうしたら頭ひとつ抜きん出るか? そう考えて、スリーポイントシュートをするスリーポイントラインから1m離れた位置からボールを放つと相手に邪魔されないなと。
基本、ロジカル思考なんです。
以来、部活の後は居残りをして300本シュートの練習をする毎日。すると100本中95本はゴールできるまでになりました。じつは今も社会人のバスケのコミュニティをつくって、ときどきコートを走っています。

――エイジングに対しての考え方は?

建築では、完成したときからエイジングされているかのような、まわりと調和しているような、新築に見えないものがいいという想いが根底にあり、そういった建築物をつくり続けています。
人間に関しては、自然に起きることにあらがわず、受け入れることを大切にしています。
子育てだって思い通りにならないのが楽しい。指示するだけではやらないし、やりたいという気持ちをどう引き出すかを考えます。

群馬・みなかみの山頂に湯治の名を冠した5棟のヴィラには、インフィニティプールやプライベートレストランが。現代の温泉集落「NOT A HOTEL MINAKAMI TOJI」。

――オンとオフの切り替えはどうしていますか?

東京と北海道、出身の広島、てがける建築がある土地に行くことが自然にオンとオフになっています。東京は時間を短縮できる便利な豊かさはあります。入浴してさっと外出してご飯を食べて歩いて帰ることができる。けれども便利はアホをつくるとも感じているんですね。
自然のなかに身を置くと、不便だからこそ知恵が生まれるのだと気づくのです。
僕はゼロからイチを生み出すことが得意で、好奇心もあるから10もの法人を並行して進めています。それは、「地球と遊んでいる」感覚です。

――いつも新しい挑戦をする谷尻さん、次なる構想は?

水ですね。究極のサプリメントは水ではないかと。
ただ、飲料水は、まわりからはレッドオーシャンだよ、競争が激しいよ、と言われますが、世界中のサウナや温泉を経験していると、水によってからだの整い方が異なるんです。水がいいと整い方が格段に上がります。
僕の事業は、好きから生まれることが多くて、遊びに訪れた先にプロジェクトをつくることが増えました。サウナ好きが高じて相模原で宿泊事業やキャンプ事業もあわせたサウナプロジェクトを進めています。サウナは木と水と石を体験する古代からの遊びです。
まさに地球と遊んでいる感覚ですね。

ーー若い方に伝えたいことは?

若い頃は時間に投資、その次の世代ではスキルに投資、その先にやっと時間を短縮するスキルが身についてお金を得ることができる、順序が大切だと実感しています。
一般的に、問題点があったときにその理由を考え改善する道を探りますよね。僕の場合は逆です。
楽しいときに問題視するクセをつけています。例えば、訪れたレストランが最高に心地よかった。楽しかったで終わりではないんです。楽しかったのはなぜ? 会話しやすいのはなぜ? 顔がきれいに見せる照明はなぜ? 右脳と左脳、直感とロジカルを行き来するのがいいんです。

谷尻誠(たにじりまこと)プロフィール


建築家・起業家
SUPPOSE DESIGN OFFICE Co.,Ltd. 代表取締役
1974年 広島生まれ。2000年建築設計事務所SUPPOSE DESIGN OFFICE設立。2014年より吉田愛と共同主宰。広島・東京の2ヵ所を拠点とし、インテリアから住宅、複合施設まで国内外合わせ多数のプロジェクトを手がける傍ら、近年「絶景不動産」「tecture」「DAICHI」「yado」「Mietell」をはじめとする多分野で開業、事業と設計をブリッジさせて活動している。2023年、広島本社の移転を機に商業施設「猫屋町ビルヂング」の運営もスタート、2025年には「葉養」というサプリメントをリリースするなど事業の幅を広げている。
主な著書に『CHANGE -未来を変える、これからの働き方-』『1000%の建築~僕は勘違いしながら生きてきた』『職業=谷尻誠』(以上、エクスナレッジ)、『美しいノイズ』(主婦の友社)、『談談妄想』(ハースト婦人画報社)など多数。12月中旬に『建築家で起業家の父が息子に綴る「人生の設計図」』(三笠書房)を発刊予定。
【SUPPOSE DESIGN OFFICE 作品集】
「SUPPOSE DESIGN OFFICE -Building in a Social Context」(FRAME社)

http://www.suppose.jp

https://www.instagram.com/yoyo_nature/

鵜飼恭子

&kitto編集長

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美容誌MAQUIAの編集者を経て、美容ジャーナリスト。10代に正しい美容を早期に伝えるイベント「TBZティーンビューティゼミ」主催。香り分析(嗅覚反応分析士)で心身バランスを可視化するサービスを企業や大学のセミナーで行う。子どもの頃は帰宅してまず「かつおぶし削り」のお手伝い。お菓子や味噌など食をはじめ、衣服やインテリアなども母の手づくりで育つ。その反動で20代の食生活は乱れるが、出産を機に見直す。日本フェムテックマイスター協会評議員、嗅覚反応分析アンバサダー、MBA(経営管理修士)

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