東京の公立小学校で実現した“月1回ヴィーガン給食”取材レポート
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日本ではまだまだ認知されていないヴィーガンという生き方。ヴィーガンと聞いても「いったいどんな人を指す言葉なのかわからない」という人も少なくないのではないでしょうか。そんななか、学校給食にヴィーガン・デーを導入し、子どもたちにヴィーガンの食を体験する機会を設けている小学校がありました、 “ヴィーガン給食”を実施する八王子市立浅川小学校にVEGANLIFE編集部がうかがいました。
食べるという体験を通してさまざまな文化や価値観を学んでほしい
八王子市立浅川小学校で月に一度実施されている“エブリワン・ヴィーガン給食”は、環境省アンバサダーとしても活躍する清水校長が特別活動の一環としてスタートしたもの。宗教上の理由やアレルギーなどの理由で除去食対応が必要な児童たちも同じ献立を楽しむ“エブリワン給食”を前身に、日本ヴィーガン協会の室谷理事長監修のもと実現されました。「アレルギーはもちろん、文化や価値観の違いによってさまざまな食の選択をする人がいるということを子どもたちに知ってほしいという思いではじめました(清水校長)」
「清水校長からお話をいただいたときは、公立小学校でのヴィーガン食実施という革新的な取り組みに驚きましたが、子どもたちにヴィーガン食のおいしさを体験してもらえるのは嬉しいことですよね(室谷理事長)」
子どもたちが楽しみにしている給食だからこそこだわったのは“おいしさ”
エブリワン・ヴィーガン給食としての実施は3回目となるこの日のメニューは、マーボー茄子、もやしの中華スープ、ごはん。牛乳の代わりにみかんジュースがつきます。マーボー茄子には、人参やピーマン、豆腐などが含まれ、ひき肉の代わりに大豆ミートが使われていました。「子どもたちが給食の時間を心待ちにしてくれているからこそ、一番こだわっているのはおいしさです。植物性の食材だけを使ってコクのある味わいを再現するにはどうすればいいか、昆布だしで中華スープの味わいを生むにはどうすればいいか、室谷さんの監修のもと、自宅で研究を重ねながら献立開発に取り組んでいます(管理栄養士)」
野菜たっぷりの麻婆豆腐はしっかりとした味付けにごはんが進む一品。昆布だしをベースにした中華スープはごま油が効いていて風味が良く、食欲をそそります。子どもたちの完食率が高めなのもうなずけるおいしい献立に驚きました。
「まずは何の偏見もなく、ヴィーガンの食を体験してほしいと思っているので、今の時点で“ヴィーガンとは?”を教えることは敢えてしていません。その代わり、給食の献立表にヴィーガンという言葉を入れています。毎日の給食を楽しみにしている子どもたちにとって、献立表はとても身近で毎日のように目にするものです。“ヴィーガンってなんだろう”と疑問を持つ子もいますし、家庭で調べたり、家族と話したりするきっかけになればいいですね(清水校長)」
ヴィーガンになってほしいわけじゃない。大切なのは“食の選択肢”を知るということ
「私は子どもたちに必ずしも“ヴィーガンになってほしい”とは考えていません。ただ、世界にはあらゆる食の選択があり、そのひとつとしてヴィーガンという価値観があることは知っておいてほしいですね。知らないと選択することもできませんし、そういう生き方を選んだ人へどう配慮すればいいのかもわからないのですから(清水校長)」
清水校長が大切にしているのは、「他人の価値観を尊重する心を養う」ということ。ヴィーガン給食というおいしい食体験を通じて、ヴィーガンという存在を知り、あらゆる食習慣の人を尊重できる子を育てる、素晴らしい取り組みであると感じました。
未来を背負う子どもたちからヴィーガンの認知の輪が広がっていくのはとても嬉しいこと。まだまだヴィーガンの認知度が低い日本ですが、こうした取り組みが今後も広がっていくことに期待したいですね。