東京で人気のアサイーボウル「Aubrey House」|半年以上かけて辿り着いた、奥深い一杯

公開日: 2026.10.26

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東京でアサイーボウルを探したことがある人なら、一度は「Aubrey House」の名前を目にしたことがあるかもしれません。


華やかな見た目のアサイーボウルはもちろん、空間やグラフィック、ファッション、音楽まで含めて独自の世界観をつくり上げているAubrey House。いわゆる“ヘルシーカフェ”という言葉だけでは収まらない、ひとつのブランドとして存在感を広げています。


今回お話を伺ったのは、Aubrey HouseのProducerを務める笹岡恵利子さん。北海道の一般病院で看護師として勤務した後、2015年に上京し、現在も美容クリニックで看護師として働きながら、Aubrey Houseでは商品だけでなく、店舗空間や見せ方、お客様がその場所でどう感じるかまで含めてブランド全体を見ています。

Aubrey House Producer 笹岡恵利子さん


今では東京で注目を集める存在となったAubrey Houseですが、その始まりは意外なほど個人的なものでした。

半年以上の試作から生まれた、Aubrey Houseのアサイーボウル

笹岡さんがアサイーをつくり始めたのは、最初からお店を開こうと思っていたからではありません。もともと好きなアサイーのお店があり、コロナ禍をきっかけに「自宅でも自分好みのアサイーを食べたい」と思ったことが始まりでした。

当時、アサイーについて詳しい知識があったわけではなく、バナナを入れてみたり、さまざまな素材をブレンドしてみたりしながら、少しずつ自分の好みの味を探していったそうです。試作は半年以上。自分の中で「これなら本当においしい」と思えるところまで持っていくのに、かなり時間がかかったと話します。

そのアサイーを初めて友人たちに振る舞ったとき、返ってきたのは「今まで食べたアサイーの中で一番おいしい」といった反応でした。それまで自分のためにつくっていたものについて、他の人から意見をもらう機会はほとんどなかったそう。自分がおいしいと思っていた味を、他の人もおいしいと感じてくれた。そのことが、飲食の仕事へ進む大きなきっかけになりました。友人たちが喜ぶ姿を見て、自分自身もうれしくなったことが始まりだったと語っています。

アサイーボウルは、実は奥深い

一見するとシンプルに見えるアサイーボウルですが、実はかなり奥深い食べ物です。アサイーそのものの味だけでなく、合わせるフルーツやジュース、甘さ、食感によって、仕上がりは大きく変わります。

リンゴジュースのような風味を感じるもの、バナナの存在感が強いものなど、店ごとに個性があり、「アサイーボウル」と一括りにできないほど違いがあります。


Aubrey Houseが目指しているのは、アサイーが好きな人だけが楽しめる味ではありません。実際に来店する人の中には、「以前アサイーを食べたけれど、あまり好きではなかった」という人もいるそう。それでもAubrey Houseのアサイーはおいしく食べられたという声もあるといいます。

その背景にあるのが、笹岡さんが大切にしている「おいしさが先でいい」という考えです。
身体にいいから我慢して食べるものは、なかなか日常にはならない。まずおいしくて、また食べたいと思えること。その先に、素材の良さや身体へのうれしさが自然についてくる。それがAubrey Houseの理想だといいます。

「ヘルシー」を我慢にしない

Aubrey Houseにとっての「ヘルシー」は、ストイックなものではありません。毎日完璧である必要はないし、甘いものを楽しむ日があってもいい。その中で「今日は少し身体が喜ぶものを選ぼう」と思えることこそ、ヘルシーなのではないかと笹岡さんは考えています。

身体にいいものと、おいしいもの。かわいいものと、気分が上がるもの。それらは対立するものではなく、きちんと両立できる。だからこそAubrey Houseでは、健康を我慢の延長線上に置かず、日常の中で自然に楽しめるものとして提案しています。

素材選びにも、その考え方が表れています。オーガニックだから、産地が有名だからという肩書きだけで決めるのではなく、実際に食べておいしいか、食感が楽しいか、見たときに気分が上がるかまでを見る。グラノーラひとつでも、味だけではなく音や食感まで含めて考えるといいます。

一方で、質の高いものを選べばそれでいいというわけでもありません。日常的に楽しんでもらえる価格で提供できるのかという視点も必要です。おいしさ、品質、価格。そのすべてのバランスを見ながら、一皿を組み立てています。

ヴィーガンも“特別扱い”しない。自然に選べるメニューへ

Aubrey Houseではヴィーガン仕様のアサイーも展開しています。もともとは青山店のみでの提供でしたが、現在は神南店でも取り扱っています。一方で、ブランド全体を「ヴィーガンの店」として打ち出しているわけではありません。大切にしているのは、ヴィーガンの人もそうではない人も、同じ場所で自然に食事を楽しめることです。


ヴィーガンアサイーボウル


以前、ヴィーガンのお客様が来店した際、その場で食べられる形にアレンジして対応したことがありました。そうした経験から、「最初から選択肢として用意されていれば、お客様自身が自然に選べる」と考えるようになり、青山店のオープンをひとつのきっかけにヴィーガン仕様のメニューを取り入れたそうです。

ヴィーガンだから特別なメニューとして分けるのではなく、普通においしい選択肢のひとつとして存在していることに意味がある。その考えは、一貫しています。

今後も、無理なくおいしいものとして成立するのであれば、プラントベースやヴィーガンの選択肢を増やしていく可能性はあるとのこと。ただし、カテゴリーありきで商品をつくるわけではありません。

「サンドイッチを食べたいけれど、この食材は食べられない」といった声があれば、できる範囲でアレンジすることもある。お客様とのコミュニケーションの中で、その人が心地よく選べる方法を探していくことも、Aubrey Houseが大切にしていることのひとつです。

売れそうでも、Aubrey Houseらしくなければやらない

そうした柔軟さがある一方で、商品やデザインについては驚くほど厳密に「Aubrey Houseらしいか」を見ています。
Aubrey Houseでは、料理だけでなく、空間、グラフィック、スタッフ、音楽、SNSまで含めて「Aubrey Houseっぽい」と感じてもらえることを大切にしています。



今回の取材では、その考え方がよく分かるエピソードも聞くことができました。

例えば、商品開発の過程でチョコレート系のグラノーラを検討したことがあったそうです。笹岡さん自身はチョコレートが好きで、味としては魅力的。それでも「おいしい」「健康」「Aubrey Houseの雰囲気」というバランスで見たときに、少し方向が離れてしまうと感じ、商品化を見送ったものもあるといいます。

Aubrey Houseのオンラインサイトで購入可能。ヴィーガングラノーラ(はちみつ不使用)


現在改良を重ねているドリンクでも、ストロベリー系のフレーバーが候補に挙がったことがありました。味だけを考えれば魅力的でも、「ストロベリー」という言葉やイメージによって、少しフェミニンな印象が強くなる。Aubrey Houseの店舗の空気感とは少し違うのではないか、という判断で採用しなかったそうです。

売れそうだからつくるのではなく、それがAubrey Houseに存在する理由を説明できるかどうか。
笹岡さんは「売れそうだから、だけではやらない」と話しています。数字はもちろん大切ですが、それをやったときにAubrey Houseが少し面白くなるのか、好きになれるのか。ブランドとしての理由を説明できないものは、できるだけやらない。その判断を大切にしているといいます。

反対に、出会ったときに「これは絶対にやりたい」と思ったものもあります。そのひとつが、ピーナッツバターです。


余計なものを加えず、ピーナッツそのものの香りやおいしさを感じられるものを探したものの、シンプルな状態で本当に納得できるものを見つけるのは簡単ではなかったといいます。


さらに、そのピーナッツバターを提供するための専用機械にもこだわり、海外から取り寄せた機械を整備して使用。店舗に合わせて一部を制作するなど、商品だけではなく、どう見せるのか、どんな体験として届けるのかまでつくり込んでいます。


こうした話を聞いていると、Aubrey Houseがつくっているのは単なるメニューではないことがよく分かります。

アサイーの先へ。食からカルチャーへ広がるAubrey House

Instagramにも、その姿勢は表れています。
投稿されているのは料理だけではありません。人物やファッション、空間のディテールなども含めて見せることで、単なるメニュー表ではなく、一つのカルチャーを見ているような場所にしたいと考えています。

笹岡さんは、飲食だけを見てブランドをつくることはあまりないと話します。ファッションのシーズンの見せ方や音楽の空気感、雑誌の編集など、違うジャンルから得た感覚を、食や店舗にどう翻訳するのかを考えることが好きなのだそうです。

「今日は何を食べるか」「何を着るか」「どこで過ごすか」は、すべてその人の気分や価値観の表現であり、Aubrey Houseもその選択肢のひとつでありたい。その言葉からも、飲食だけに閉じないブランドの考え方が伝わってきます。


現在は、店舗だけではなく、Aubrey Houseの世界観を自宅でも楽しめるような商品づくりも進めています。グラノーラやピーナツバターなど、「Aubrey Houseの朝」を家でも楽しめる商品に特に可能性を感じていると話していました。


食べて、その場で終わるのではない。アパレルを身につけたり、自宅で商品を楽しんだりすることで、Aubrey Houseを生活の中に持ち帰ってもらう。

アパレルについても笹岡さんは、物販というより「ブランドの世界を広げる一つのメディア」だと表現しています。
新しい店舗や商品、ブランドとの取り組みなど、これからに向けた動きもすでに始まっています。ただし、店舗数や商品数を増やすことそのものが目的ではありません。

新しいことを始めるなら、その場所だからできること、その商品だからAubrey Houseが手掛ける意味があること。その理由をひとつひとつ考える姿勢は、これからブランドが広がっていっても変わらないのだろうと思います。

では、Aubrey Houseは結局「何屋」なのでしょうか。
カフェでもあり、レストランでもあり、アサイーボウルのお店でもあり、アパレルも扱うブランドでもある。
笹岡さんにその問いを投げかけると、返ってきたのは「日常を少し楽しくする場所」という言葉でした。
食べること、着ること、人と会うこと、新しいものに出会うこと。そのすべてをひとつの場所で自然につないでいく。何屋なのかを一言で説明できなくなっていくこと自体が、Aubrey Houseらしさなのかもしれないといいます。

半年以上かけて、自宅で繰り返したアサイーの試作から始まったAubrey House。一見シンプルに見える一杯の中には、味、素材、価格、見た目、空間、ブランドの世界観まで、いくつもの判断が積み重なっています。


ヘルシーだから食べるのではなく、おいしいからまた食べたい。ヴィーガンだから特別なのではなく、自分に合う選択肢として自然に選べる。
アサイーボウルを入口にしながら、Aubrey Houseがつくっているのは、食だけでは終わらない新しい日常の楽しみ方なのかもしれません。

Aubrey House 渋谷神南店


東京都渋谷区神南1丁目13−4 フレームインボックス 2F
営業時間:8:00〜22:00(L.O. 21:00)
電話番号:03-6427-0863
https://aubrey-house.com/ja/pages/shibuya-jinnan

Aubrey House 渋谷青山店


東京都渋谷区渋谷2-11-14 ステージ青山1F
営業時間:9:00〜21:00(L.O. 20:00)
電話:03-6452-6100
https://aubrey-house.com/ja/pages/shibuya-aoyama

服部めぐみ

VEGAN’S LIFE編集長

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ヴィーガン検定1級/発酵食品マイスター。美容・食・サステナブル領域を専門とするエディター。生産者やブランドの哲学を伝える取材・編集を行う。「未来に残したい価値を、読者の心に残るコンテンツへ。」をテーマに、プラントベースを軸とした新しいライフスタイルを発信している。

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