ヒマラヤに眠る宝石ピーナツから誕生した〝SANCHAI″とネパールの女性たちの人生を変えた人

公開日: 2022.2.3

更新日: 2022.8.28

インタビュー

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毎週土日、青山の国連大学前で開催しているファーマーズマーケットやインタネットを中心に販売され、口コミだけで広がっているネパール・コタン発のピーナツバター「SANCHAI(サンチャイ)」をご存じですか。

ブランド名の「サンチャイ」は、ネパール語で「How are you?」のような意味。ネパールの人々にとって誇りに思えるようなブランドにしたいと思い、彼らに馴染みのある言葉より。

このピーナツバターは、口にした人たちに幸を与えてくれると注目が集まっている。

ヒマラヤのふもとの村で、ネパールの女性たちが手作りするピーナツバターは、素材はいたってシンプルだが、他のピーナッツバターと違って、濃厚なピーナッツのあとにブラウンカルダモンがふわっと香り、エネルギーをチャージしてくれる。

原料:ピーナツ、岩塩、香辛料 <無糖とブラウンシュガー入りの2種>

こちらの製品は、「どのようにして誕生したのか?また、製品を通して何を伝えていきたいのか?」をSANCHAI 代表取締役の仲 琴舞貴 氏に伺った。

SANCHAI 代表取締役 仲 琴舞貴 氏

仲氏は、2016年IoT サービスを使った寄付のプロジェクトを行うことを目的にネパールのコタンを訪れた。首都カトマンズから山道を車で15時間以上、世界最高峰エベレストに近いネパール東部の山岳地帯にある場所だ。

コタンには、産業がないことから生計を立てるため男性は中東などに出稼ぎをする人がほとんどで、女性は村に残り家庭を守りながら畑作業などを行っていた。ちょうど訪れたころは、あちらこちらの畑で地元の人がピーナツを手作業で収穫していた。

この一帯では、昔からピーナツが作られていたが、コタン産のものはネパールでも知る人がほとんどおらず、そのため市場に出回ることもなかったという。また、地元の人たちは加工することなくそのまま食べるのが一般的なスタイルだ。

寒暖差が激しく乾燥した標高約1000メートルの高地で、農薬も使わずに育ったピーナツは、一度も品種改良されていない在来種。この原石で地元の人がピーナツ製品を作ることができたら、生活がずっと豊かになるのではないかと考え、コタンから戻った後にすぐに行動に移した。

友人や人生の先輩方に、コタンのいまや家庭を守る女性たちについて、また「原石となるピーナツを活かしたピーナツバターを作り、その取り組みを通して村の人たちの自立を応援する仕組み作りたい!」と伝えた。

様々な人からのアドバイスをいただきながら行動に移していくと、ピーナツバターを作るにあたっての課題も見えてきた。

コタンの風景

経済的な基盤を作るだけなら、インフラが整備された都市部に工場を作り、農家さんが作るコタンのピーナツを正規値段で買い取ることで良いのではと思う。しかし、目的は「コタンの多くの人々に幸せを作ること」だ。

偶然や奇跡が重なり、工場の開業前に村への送電が始まった。送電前には、「どうやって均一にピーナツを砕くべきか?など」と試行錯誤していたが、村に電気が通ったことによってピーナツバター工場完成に向けて動き出した。

それと同時に、日本とは感覚が全く違うコタンの人々にどのようにしたら工場を任せることができるのか?を考え、「この土地に工場を作りたい想いや目指している方向性」などを村人一人一人に説明して回った。

その後、工場建設予定地周辺の50軒以上の家庭に足を運び、「工場を自分たちで作りたいこと、もし賛同していただけるなら一緒に働いてほしいこと」を伝えた。

募集に際して、男女の縛りはつけていませんでしたが、結果的に集まってきたのは女性が9割以上。仕事への意気込みを感じた女性8人を採用し、ついに工場での生産がスタートした。

家庭以外で仕事をしたことがない女性たちだが、工程を伝えると思った以上にスムーズに作業が進んだ。

きっと、全く今まで認識がなかった衛生管理をしっかりと学び、実行し、自分たちでチームとして声を掛け合って向上する意思持ち、彼女たちが口々に言っていた「私たちが成長して、この村をよくしていきたい」という気持ちが強かったからだと思う。
少しずつ仕事に慣れてくると、「飽きてしまうのではないか?仕事のミスが増えるのではないか?モチベーションが下がってしまうのでは?」など不安に思うこともあったが、彼女たちには全くそのような気持ちがなく、その姿をみたとき「この仕組みを絶対に継続していく」と仲氏は心に誓った。

製品を通して、叶えたいこと。

工場の子達には「あなたたちが作る商品の先に、食べて喜んでくれる人、作っているあなたたちを応援してくれる人、たくさんのお客様の存在があることを想像してね」と伝えています。彼女たちにとって、それは金銭的な対価以上に働くことの喜びや自己肯定に繋がります。
そして、同時にお客様たちにもピーナッツバターの先に幸せを感じながら作っている現地の女の子たちがいて、その幸せを支えるひとつだと感じていただけたら嬉しいです。ピーナッツバターが手紙のように、双方の幸せを繋ぐものになって欲しいと思っています。

ヴィーガンにも!SANCHAIおすすめレシピ

ピーナッツバターは良質なピーナッツの油分と豊富なタンパク質が取れる健康食です。特に弊社のピーナッツバターは他のピーナッツバターに比べてタンパク質が豊富です。ヴィーガンの方にはビネガーやレモン汁などの酸味を少し加えてドレッシングやディップにしてお野菜と召し上がっていただくのがお薦めです。

VEGANLIFE編集部が取材をさせていただき、「世界には能力を持っているのに、それを活かすチャンス・場所がない人々が沢山いる。しかし、小さなチャンスに誰かが気づけること、またそれを仕組みにすることで彼女たちのように自分の力で人生を変えていける。」「利益第一ではなく、人々の幸せを循環させることを第一に」という仲氏のメッセージに最も共感した。

仲氏とコタンの女性たちの想いが詰まったSANCHAIを通し、笑顔がもっと大きく続く未来になりますように。


写真提供: 仲 琴舞貴さん

VEGAN’S LIFE編集部

編集部スタッフ

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学生時代から世界中を旅する中で出会ったヴィーガンライフ。健康のために、ヴィーガン食を取り入れています。 ヴィーガン検定1級/発酵食品マイスター

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