ヴィーガンレザーの世界も広がる? レザーに代わる生分解可能な100%植物性の循環型新素材 “EUMIS skin” 。
公開日: 2025.4.23
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環境問題や工業型畜産、衣料の大量廃棄といったアパレル産業の裏側で起こる数多の課題に向き合い、“自然の循環とものづくりの共存”を目指して活動を開始したEUMIS(エウミス)biomaterials。そこから、農作物の廃棄からなる、100%植物性かつ循環型の新素材の「EUMIS skin」を発表。
循環型の新素材「EUMIS skin」について
EUMIS skinは、本革・合成合皮(ヴィーガンレザー)に匹敵する柔軟性と耐久性を持つ、100%植物性の循環型新素材。現在、全世界で200社以上の企業がヴィーガン/植物性レザーの製造に取り組んでいると言われていますが、その中で完全に植物由来原料のみで作られ、生分解機能のある素材は1割に満たないとも言われている。日本国内では、EUMIS skinが初めての取り組みとなる。
素材の主原料には、耕作放棄地に実る渋柿の搾り汁を発酵させた日本の伝統素材「柿渋」と、甜菜(てんさい)から甜菜糖を製造する際の廃棄原料を独自技術で発酵させた「セルロースナノファイバー」を使用。そのため、口に入れても安全で、果物の香りがしたり、種の粒が残るなど、天然の植物原料ならではの風合いがあるのが特徴。また、地域特産の食品廃棄を加えることで、全国各地の風土を生かしたご当地skin(素材)作りも可能。
誕生の背景にある社会課題
大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とした直線型経済システムは、気候変動や生物多様性損失をはじめ様々な負の外部性をもたらしている。なかでもアパレル産業は石油産業に次いで世界で2番目に環境負荷の大きい産業であり、生産時の資源の過剰利用や水質汚染、そして廃棄においては、世界全体でおよそ「1秒ごとにトラック1台分」の衣料品が焼却あるいは埋め立て処分されるほどに問題は深刻化している。
また鞄や靴など多くのアパレル製品に利用されるレザー素材は、本革製造では薬品や大量の水を消費し、工業型畜産による森林破壊や動物福祉の観点からも課題がある。その代替品として近年誕生したヴィーガンレザーは、動物成分を含まないもののその多くが石油由来であり、環境負荷の課題を抱えている。こうした現状にアパレル産業の変革の必要性を痛感し、新たな素材の可能性を探るため、2021年に植物マテリアル開発プロジェクト「EUMIS biomaterials」を立ち上げ、生物圏循環が可能な新素材「EUMIS skin」を開発するに至った。
EUMIS skinの素材循環
循環型の未来の実現に向けた、今後の動きについて
2025年4月初頭、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する「研究開発型スタートアップの起業・経営人材確保等支援事業/ディープテック分野での人材発掘・起業家育成事業(NEP)/開拓コース」に採択され、プログラムを通じてEUMIS skinのさらなる品質向上を目的とした研究開発及び事業化を進めていく。
今後は、小ロットでの素材供給に向けた生産体制を構築し、地域の未利用資源を活用した全国ご当地skinの製造を通じて、地域課題解決に挑戦する。
日本各地にご当地skinの製造工場と循環システムを構築し、地域独自の素材作りを行いながら、工場を中心に人が行き交う場をつくることで、地域・農家・市民・ブランドなど、多様なステークホルダーがつながり、共に循環型社会の実現を目指す。
EUMISが目指す「自然の循環とものづくりの共存」
「幼い頃から服作りに親しみ、大量生産ではなく、一人ひとりに寄り添うオーダーメイドの仕立て屋としてキャリアを積んできた。しかしコロナ禍を機に、ファッション産業の裏側にある課題を知って愕然とし、今回の素材開発のプロジェクトを、2021年に自宅キッチンからスタート。
ものづくりは沢山の資源を必要とし、また廃棄を生み出すという側面がある。ファッション産業に限らず、前述した数多くの課題が山積する現状においては『もうこれ以上新しいものを作るべきではない』と考える人もいて当然でしょう。
それでも、ものづくりは人生を彩ってくれる無くてはならないもので、心を豊かにしてくれる愛すべきものなのです。だからこそ、この矛盾と葛藤を抱えながら、EUMISは「自然の循環とものづくりの共存』を目指し、人間活動と生態系が共生する新しい時代の循環型のものづくりを追求していきたいと思っている。」 (代表 爪長)
EUMIS skinシリーズの一つ、人参の廃棄を使用した「Carrot skin」に植物性プラスチックのハンドルを用いたバッグ(試作品)。フードコンポストで丸ごと堆肥可能
EUMIS biomaterials 代表 爪長 季美について
環境問題に取り組む仕立て屋
幼い頃から服作りを始め、ファッションの原点である少数民族訪問の旅をする中で一切無駄のない自然のサイクルに基づいた物作りを学び、大量生産ではないオーダーメイドの仕立て屋として衣装制作やアートワークを手がける。コロナ禍をきっかけに環境問題や畜産動物の扱われ方に疑問を持ち、多くの課題を抱えるアパレル産業を中心に、これからのもの作りが持続可能となるよう取り組みを続ける。
https://eumisjp.com