なぜ“おいしい野菜”は人を変えるのか?日本の農業を強くするパソナの挑戦

公開日: 2026.4.28

インタビュー

レストラン

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「おいしい」の正体は、まだ言語化されていない

「おいしい」と感じる瞬間は、単なる味覚の問題ではありません。
畑で採れたばかりの野菜を口にしたとき、体にすっと染み込むような感覚。思わず「どうしてこんなにおいしいんだろう」と感じた経験がある方も多いのではないでしょうか。その“おいしさ”の背景には、鮮度や栄養価だけでなく、育て方、環境、そして人の想いが関係しています。

今回お話を伺ったのは、パソナグループが事務局を務める一般社団法人 プラントベース ライフスタイル ラボ代表理事、パソナ農援隊代表の田中康輔さん。

プラントベース ライフスタイル ラボ代表理事、パソナ農援隊代表の田中康輔さん。


一般社団法人プラントベース ライフスタイル ラボは、「地球と人の健康」および「社会の持続的な発展」への貢献を理念に掲げる団体です。カゴメやキユーピーなど食品メーカーが多いですが、商社、インフラ、外食、サービスなど経済を支える幅広い企業・団体など50社以上の企業や団体が参画し、食の枠を超えた新しいライフスタイルを社会全体に広げていこうとしています。設立の背景には、食の選択肢を広げるだけでなく、環境と向き合い、持続可能な食の在り方を社会全体で育みたいという想いがあります。現在は企業間の連携が先行していますが、2026年からは消費者への認知拡大が大きなテーマです。とくに若年層や教育現場へのアプローチを重視し、学校給食や学食、社員食堂などでの導入を通じて、“おいしさ”とともにプラントベースの価値を実感できる仕組み作りを進めたいと考えています。味や価格といった実用性の向上と並行し、食のリテラシーを高めることで、ライフスタイルとしての定着を目指しています。



そして、パソナ農援隊が掲げるのは、“日本の地域農業を支える“強い農業者”を育成する“というミッションです。食と農、そして人をつなぐ取り組みは、いまの時代において重要な意味を持っています。

食べる喜びが、農業への危機感につながった

震災復興事業やフランスの食文化の経験、経済産業省の経験が今に生きる。


田中さんのキャリアは、農業から始まったものではありません。阪神淡路大震災の復興プロジェクトや、神戸港でのクルーズ船レストラン事業など、新規事業の立ち上げに関わってきました。さらに、経済産業省への出向や、官民連携の仕組みづくりにも携わっています。
「農援隊の責任者を任されたときは、正直驚きました」
そう語る田中さんですが、その根底には一貫した価値観があります。
それは、「食べることは人生の喜びである」ということ。
幼い頃、母親がつくってくれたコロッケや春巻き。その記憶が、今の原点になっています。フランスでの5年間の生活を経て、日本の食の豊かさを再認識した一方で、その基盤である農業の衰退に強い危機感を抱きました。
「生産が成り立たなければ、おいしいものもなくなってしまう。それは、多くの人の幸せが失われるということです」

なぜ淡路島か──原点と復興の記憶が重なる場所

淡路島に広がる、建築美と癒しが融合した全11棟のヴィラ「燦燦Villa」


パソナグループは、本社機能の一部を淡路島に構え、田中さんも淡路島を拠点に活動しています。なぜ、プラントベースや農業の取り組みの舞台が淡路島なのでしょうか。そこには、自然環境や立地といった条件だけではない、明確な“原点”があります。
パソナグループの創業者は兵庫県の出身。
そしてこの地は、阪神淡路大震災という大きな出来事を経験した場所でもあります。
田中さん自身も、震災復興のプロジェクトに関わってきました。街が少しずつ再生していく過程のなかで、「産業が人の暮らしを支える」という現実を、強く実感したといいます。
「本当の意味で地域が立ち直るには、雇用や産業が必要です」
その想いが、現在の農業への取り組みにもつながっています。
淡路島は、豊かな自然に恵まれた土地でありながら、人口減少や高齢化といった課題も抱えています。これは、日本全国の地域が直面している縮図ともいえる状況です。だからこそ、この場所で持続可能な農業モデルを確立できれば、全国へと展開できる可能性がある。いわば、“地域再生のモデルケース”としての意味を持っています。
さらに、島という地理的特性も重要です。外部からの影響を受けすぎず、ひとつのエリアの中で「生産・流通・消費・体験」を一体で設計することができます。
農業だけでなく、食や宿泊、ウェルネスまでをつなげた体験。それらを一貫して届けられる環境が、ここにはあります。
「農がある暮らしを、まるごと体験できる場所にしたい」
震災からの復興の記憶と、地域への想い。その両方が重なり、淡路島というフィールドが選ばれました。

野菜を主役にすると、食体験は変わる

大きな茅葺屋根が特徴の農家レストラン「陽・燦燦」。建築はプリツカ―賞受賞の坂茂氏。


淡路島でパソナ農援隊が展開するサスティナブルガーデン「Awaji Nature Lab & Resort」では、「野菜を主役」にした食体験が提供されています。
農家レストラン「陽・燦燦(はる・さんさん)」で提供しているひと皿に約15種類の野菜。それぞれがしっかりとした味わいを持ち、奥行きのあるおいしさを感じられます。
その理由のひとつが、“収穫からの時間”です。
野菜は生き物であり、収穫された瞬間からエネルギーが落ちていくそうで、とれたての野菜は、味も栄養も圧倒的に高い状態にあります。
さらに、調理方法も重要です。
「生野菜は細胞壁の影響で栄養の吸収率が下がります。スープや鍋にすることで、効率よく栄養を取り入れることができます」
実際に、畑で収穫した野菜をその場で食べる体験を通じて、野菜が苦手だった子どもが食べられるようになるケースも多いといいます。“おいしい”は、味覚だけでなく体験そのものなのです。

プラントベースは、本来の食への回帰である

プラントベースフードが広がる中で、「制限のある食事」と感じる方もいるかもしれません。しかし田中さんは、それをまったく違う視点で捉えています。
「1975年頃の日本の食生活は、とてもバランスが良かったとされています」
魚、野菜、米を中心とした食事。現代と比べて肉の比率が低く、古来日本の自然に近い構成です。つまりプラントベースとは、新しい概念ではなく、本来の食生活への回帰ともいえます。
「動物性食品を否定するわけでも代替食品を推奨するわけでもありません。おいしい野菜やプラントベース食品だと無理なく続けられる。すると結果的に体も整っていきます。“おいしい”と感じられることがなにより重要です」

農業はビジネスになる時代に入っている


パソナ農援隊が運営するアグリベンチャー大学院では、異業種から農業に参入する人が増えています。その背景には、農業をビジネスとして捉える新しい視点があります。
・中間流通を減らし収益を安定させる
・加工品として付加価値をつける
・体験型コンテンツとして提供する
これまで「生産」に特化してきた農業に、「経営」の視点が加わることで、収益構造は大きく変わります。
「農家さんはすでに高い技術を持っています。そこに経営の視点が加われば、さらに強い産業になります」

Awaji Nature Lab & Resortが提供する「農ある暮らし」を体験する滞在型施設

「燦燦Villa」に11棟あるヴィラのひとつ「鳥の家」


淡路島にあるはたけのリゾート「燦燦Villa」は、単なる宿泊施設ではありません。
コンセプトは、「農ある暮らし」。
建築には、大阪・関西万博の大屋根リングを設計した藤本壮介氏や中村拓志氏など日本を代表する建築家たちが参加し、風や光を取り入れる設計が施されています。室内に入った瞬間、土の香りや空気の違いを感じ、自然と心が落ち着く空間が広がります。

寝具には、京都で230年の歴史を持つ職人の技術。
タオルは今治のオーガニック素材。
細部に至るまで職人技が感じられる上質で心地よいアイテムが選ばれています。
こうした環境の中で味わう食事は、格別。実際にレストランにはリピーターが多く、「ここで過ごす時間そのものが心地いい」と感じる方が増えているようです。

▶ こんな方におすすめ
・自然の中でリセットしたい
・本当においしい野菜を味わいたい
・食とウェルネスを体感したい

今後は宿泊機能もさらに充実し、長期滞在も可能になり、“体験型ウェルネス”としての価値が高まっています。

子どもと農業体験が未来の食を変える

淡路島の名産といえば玉ねぎ。何度も訪れる親子も多い。


田中さんが重視しているのが、子どもたちの農業体験です。
収穫し、料理し、食べる。
その一連の流れを体験することで、「自分の体は何でできているのか」を実感でき、都会での生活では見えにくい、“食の背景”に触れる機会になります。
「第一次産業は、どんな時代でも必要とされる産業です」
AI時代になっても、食を支える産業はなくなりません。だからこそ、今のうちに強くしていく必要があります。

農家をスターにする仕組みが業界を変える

農業の課題のひとつが、「価値が正しく伝わっていないこと」です。パソナ農援隊では、優れた農家を表彰する取り組みや、メディアと連携した発信を行っています。さらに、生産者・シェフ・バイヤーをつなぐコミュニティも構築。情報交換や技術共有を通じて、農業全体の底上げを目指しています。
「つながることで、農家さんはもっと強くなると感じています」

“おいしい”を自宅で体験する|てまひまセレクション

取材で出会った“おいしさ”は、体験だけで終わりません。

自宅でも楽しめる商品のなかから、おすすめプラントベース商品をご紹介。


▶ おすすめプラントベース商品

シロップ2種セット(ジンジャーシロップ、いちじくシロップ) ¥2,500(税込)/てまひまセレクション

淡路島の自社農園で育まれた「大地の恵み」を贈る、贅沢なシロップセット。

新生姜のジンジャーシロップは、厳選された有機スパイスが香るマイルドな辛みが特徴。お湯や豆乳で割って、心解けるひとときを。一方、完熟いちじくのシロップは、農薬不使用の果実本来の濃密な甘みが凝縮されています。紅茶やアイスに添えて、華やかな風味を。自然の風味を大切に仕上げた、大人にこそ愉しんでほしい逸品です。


淡路島Dip!3種セット(淡路島産いちじくと玉ねぎのチャツネ、玉ねぎ葉と味噌、玉ねぎとトマト) ¥1,880(税込)/てまひまセレクション

淡路島の豊かな実りを手軽に愉しめる、贅沢なディップ3種セットです。

ミシュランシェフ監修の「いちじくと玉ねぎのチャツネ」は、完熟果実の甘みがカレーを格上げする至高の逸品。

テレビで話題の「玉ねぎ葉と味噌」は、野菜が止まらなくなる程よい甘みが魅力です。

「玉ねぎとトマト」は、パスタや肉料理に添えるだけでプロの味を再現。

和・洋・エスニックと、食卓を彩る淡路島の恵みを、心ゆくまでご賞味ください。


てまひまオンラインにて、4月24日(金)~5月24日(日)まで期間限定にて販売予定。


これらの共通点は、「素材の力をそのまま活かしていること」です。余計なものを加えず、シンプルに仕上げることで、素材本来の“おいしさ”が際立ちます。



▶ こんな方におすすめ
・プラントベースを無理なく取り入れたい
・身体にやさしい食事を楽しみたい
・本当においしいものを選びたい

今後、「てまひまオンライン」では食だけでなく、リネンやコスメなど、暮らし全体を豊かにするアイテムも展開予定です。

“おいしい”が、日本の未来をつくる


おいしいものを食べること。それは単なる消費ではありません。誰かが育てた命を受け取り、その背景にある自然や文化とつながる行為です。
「日々農業に向き合うと、自然がすべての源だと感じます。土壌の微生物は元気か、そこで育った野菜や食品をいただくことで腸環境もよくなり、心も健やかに。食と体、思考はつながっていますね。より多くの人に、楽しみながら農業に関わってほしいと願っています」
おいしい、という感覚の先にあるもの。それは、日本の農業の未来であり、私たち自身の豊かさなのかもしれません。

https://www.instagram.com/pasona_agripartnersjapan/

https://pbl-lab.net

鵜飼恭子

&kitto編集長

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美容誌MAQUIAの編集者を経て、美容ジャーナリスト。10代に正しい美容を早期に伝えるイベント「TBZティーンビューティゼミ」主催。香り診断(嗅覚反応分析士)で心身バランスを可視化するサービスやセミナーを企業や大学、医療機関で行う。子どもの頃は帰宅してまず「かつおぶし削り」のお手伝い。お菓子や味噌など食をはじめ、衣服やインテリアなども母の手づくりで育つ。その反動で20代の食生活は乱れるが、出産を機に見直す。日本フェムテックマイスター協会評議員、嗅覚反応分析アンバサダー、MBA(経営管理修士)

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