「食べられない人がいない食卓」をつくる。家族のためのファラフェルが、月5,000個を届ける事業になるまで
share
ひよこ豆に野菜やスパイスを合わせ、丸く成形して揚げる中東生まれの料理「ファラフェル」。
植物性の素材だけで作ることができ、食べ応えもあることから、世界各地でヴィーガンやベジタリアンに親しまれています。
FALAFELISTA(ファラフェリスタ)が届けるのは、小麦粉などのつなぎを使わず、パクチーの代わりにケールを取り入れた、ヴィーガン・グルテンフリーのファラフェルです。
その原点にあったのは、「ヴィーガン料理を広めたい」という思いだけではありませんでした。
重度の食物アレルギーを持つ息子と、家族全員で同じ食卓を囲みたい。一人の母親の切実な願いから始まった料理は、やがて全国のホテルやレストランへ月約5,000個を届ける事業へと成長しました。.jpg)
FALAFELISTA代表・元山青麗さんに、家族の食卓から商品が生まれた背景と、その先に描く「ボーダーレスな食」について伺いました。
生後3カ月で分かった、息子の重度の食物アレルギー
元山さんには3人の子どもがいます。真ん中の息子さんに異変が現れたのは、生後3カ月の頃でした。
まだ離乳食を始める前でしたが、顔をはじめ全身に強いアレルギー反応が現れ、病院で血液検査を受けることに。検査の結果、乳、卵、小麦、大豆、そば、ナッツなど、複数の食品に対する重度のアレルギーが判明しました。
母乳で育てていたため、元山さん自身も日々の食事を大きく見直すことになります。
一般的な小麦製品や大豆製品だけでなく、味噌や醤油などの調味料にも注意を払いながら、食べられるものを一つひとつ探していく毎日。外食や市販のお菓子を自由に選ぶことも難しく、家族の食卓には、いつしか「食べられるもの」と「食べられないもの」の境界が生まれていました。
成長するにつれて、息子さんは自分だけが周囲と同じものを食べられないことを理解するようになります。友人と同じお菓子を食べられない。外食先で自分だけ別のものを選ばなければならない。
食事の安全を守ることはもちろん、その状況を息子さんがどのように受け止めているのかを考えることも、元山さんにとって大きな課題だったといいます。
家族全員で「おいしいね」と言えたファラフェル
息子さんの成長とともに、少しずつ食べられるものが増えていきました。小麦や大豆も食べられるようになり、家族で楽しめる料理の選択肢も広がっていきます。
そんな頃、元山さんがあらためて出会ったのがファラフェルでした。
海外で目にしたことがあったファラフェルを久しぶりに食べ、そのおいしさと満足感に感動したといいます。
肉や乳製品、卵を使わなくても、しっかり食べ応えがある。何より、家族全員が同じものを食べられる。同じ料理を囲みながら、みんなで「おいしいね」と言える。その当たり前のような時間が、元山さんと家族にとっては特別なものでした。
この体験をきっかけに、元山さんは自宅でファラフェルを作り始めます。
初めは、家族のために作っていた料理でした。やがて近所の人にも配るようになると、「植物性の料理なのに食べ応えがある」「おいしい」と評判に。近隣の店舗オーナーからランチ営業を勧められ、週2回、3時間だけの間借りランチ「FALAFELISTA」が始まりました。
「ファラフェルって何?」から始まった、試行錯誤の日々
最初に間借り営業を行ったのは、東京・広尾の商店街でした。友人やヴィーガン料理を求める人、外国人客などが訪れる一方で、多くの日本人にとってファラフェルは、まだ聞き慣れない料理でした。
「ファラフェルって何ですか?」
興味を持ってもらう以前に、まずどのような料理なのかを説明する必要がある。おいしさには自信があっても、知られていないものを選んでもらう難しさがありました。
元山さんはその後、横浜、葉山、白金、代々木上原など、さまざまな場所でポップアップを開催。港区・三田では、友人が運営する飲食店と協力し、複数の料理を楽しめるフードコートのような形で営業しました。
しかし、チキンオーバーライスなどを目当てに訪れた人が、見慣れないファラフェルを選ぶとは限りません。そこで立ち上げたのが、世界各地のスープを提供する「スープネーション」です。親しみやすいスープにファラフェルの試食を添えるなど、まず一口食べてもらう接点をつくりました。
ファラフェルそのものを強く打ち出すだけではなく、知らない料理に自然と出会える入口をつくる。試行錯誤を重ねながら、元山さんは少しずつファラフェルを知ってもらう方法を探していきました。
毎日完売したNATIONAL AZABUで見えた、もう一つの可能性
転機の一つとなったのが、NATIONAL AZABU(NATIONAL AZABUは南麻布・田園調布・広尾にあるインターナショナルスーパーマーケット )への卸販売でした。
ランチ営業だけで利益を出すことに難しさを感じていたなか、NATIONAL AZABUで販売したファラフェルは連日完売。店舗で一皿ずつ提供するだけではなく、商品として届けることへの可能性が見えてきました。
一方、飲食店の現場では別の課題も生まれていました。ファラフェルは、材料を混ぜればすぐに完成する料理ではありません。豆を準備し、野菜やスパイスを合わせ、一つずつ同じ大きさに成形する必要があります。
アルバイトスタッフが成形に苦戦し、注文を受けてから提供するまでに時間がかかってしまうこともありました。
そこで元山さんは、あらかじめ自身で成形したファラフェルを冷凍し、店舗では必要な分だけフライヤーで揚げるオペレーションに変更します。
この方法が、他の飲食店からも好評を得ました。手間のかかる成形作業をせず、揚げるだけで安定したファラフェルを提供できる。家庭から始まったレシピが、飲食店の現場を支える業務用商品へと変わった瞬間でした。
睡眠時間は2〜3時間。店舗を閉めても、注文はなくならなかった
ポップアップや店舗営業、製造、育児を同時に続ける日々のなかで、元山さんの睡眠時間は2〜3時間ほどになっていました。業務用の注文は増えていく一方で、すべてを自分で作り続けることには限界があります。体が悲鳴を上げ、元山さんは一度、店舗営業を終了する決断をしました。
しかし、店舗を閉めた後も、飲食店からファラフェルを求める声は続きました。必要としてくれる人がいるのであれば、別の方法で作り続けられないか。元山さんはOEM生産を引き受けてくれる工場を探しますが、希望する生産数ではロットが少ないことなどを理由に、なかなか協力先が見つかりませんでした。
複数の工場に断られながらも探し続け、紹介を通じて出会ったのが大阪の工場でした。交渉を重ね、小ロットから業務用ファラフェルの生産を開始します。
こうして、元山さん自身が一つひとつ成形する状態から、必要とされる場所へ安定して届けられる製造体制へと移行しました。現在は、沖縄を含む全国のホテルやレストランなどへ、月約5,000個を出荷。3〜4年以上取引が続いている導入先もあるといいます。
パクチーをケールへ。小麦のつなぎを使わない理由
FALAFELISTAのファラフェルは、販売を続けるなかで寄せられた声をもとに、少しずつ形を変えてきました。その一つが、パクチーからケールへの変更です。
中東のファラフェルにはハーブが使われますが、日本ではパクチーが苦手な人も少なくありません。より多くの人が食べやすい味を目指し、ケールを取り入れました。
もう一つの大きな変更が、小麦粉のつなぎを使わないグルテンフリーの商品開発です。
かつて、小麦を食べられない来店客にファラフェルを提供できず、その人が食べるものを選べないまま帰ってしまったことがありました。
家族全員で同じものを食べられる料理を届けたいと始めたにもかかわらず、目の前にいる人へ選択肢を渡せなかった。その経験をきっかけに、小麦粉のつなぎを使わなくても成形でき、食感やおいしさを保てる配合の研究を重ねました。
そうして完成したのが、現在のヴィーガン・グルテンフリーのファラフェルです。対象となる人を限定するための食品ではなく、異なる食習慣を持つ人たちが、一緒に選べる料理をつくる。商品を改良するたびに、FALAFELISTAの目指すものも、より明確になっていきました。
業務用から、家庭の冷凍庫へ
これまでFALAFELISTAは、ホテルやレストランを中心とした業務用商品として展開してきました。
一方で、ファラフェルを知った個人客から「自宅でも食べたい」という声が届くようになります。
業務用商品をそのまま小分けして発送する方法では、手間もコストもかかります。そこで新たに、一般家庭でも使いやすい冷凍パッケージを開発しました。
家庭では油で揚げるほか、オーブンやエアフライヤーなどを使って調理することも可能。サラダやサンドイッチの具材、食事のメイン、おやつ、おつまみなど、さまざまな食べ方ができます。
ヴィーガンだから食べる。グルテンフリーだから選ぶ。
それだけではなく、「おいしくて便利だから冷凍庫に入れておく」。
そのような日常の選択肢になることが、ファラフェルがより広く根づくために必要なのかもしれません。
「人に選択肢を与える食卓」を、もっと広く
FALAFELISTAが目指しているのは、ファラフェルという一つの料理を広めることだけではありません。
元山さんが実現したいのは、「人に選択肢を与える食卓」です。
食物アレルギーがある人。宗教上の理由で食べられないものがある人。健康のために食事を選んでいる人。ヴィーガンの人。そして、特別な食事制限を持たない人。それぞれが別の料理を食べるのではなく、同じものを囲みながら「おいしい」と言える。そのための選択肢を増やしていきたいと話します。
現在、元山さんはファラフェル事業だけでなく、鎌倉市で給食の選定に関わる委員や、子どもたちに向けた食育授業、畑での活動にも携わっています。誰かに決められたものをただ食べるのではなく、自分が口にするものや、自分の体について一度立ち止まって考える。
そのきっかけを、子どもから大人まで多くの人に届けようとしています。
家族のために自宅で作った、小さなファラフェル。
その一皿は、店舗、スーパー、ホテル、レストランへと広がり、今度は家庭の冷凍庫へ届こうとしています。
アレルギー、宗教、食文化、ヴィーガンと非ヴィーガン。
FALAFELISTAがつくろうとしているのは、そうした境界をなくす料理というよりも、境界があっても全員が一緒に楽しめる食卓です。
「食べられない」を、「これなら一緒に食べられる」へ。
ファラフェルを通じた、ボーダーレスな食への挑戦は続いていきます。
冷凍ファラフェル 25個入り|ビーガン・グルテンフリー 2,980円(税込)
FALAFELISTA(ファラフェリスタ)
運営:やさいの森合同会社
代表:元山青麗
Instagram:@falafelista.japan
https://falafelista.com/


.jpg&w=3840&q=75)
