「髪を変える」のではなく、「生かす」。INNERSENSEが提案する、これからのクリーンヘアケア

公開日: 2026.10.8

インタビュー

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髪が広がる。うねる。まとまらない。そんなとき私たちはつい、「この髪質をどうにかしたい」と考えてしまう。
けれど、髪そのものに問題があるのではなく、もしかしたら見直すべきなのは、髪との付き合い方なのかもしれない。
そんな考え方を大切にしているのが、アメリカ・カリフォルニア発のヘアケアブランド「INNERSENSE(インナーセンス)」だ。


植物由来成分を中心とした処方、独自の厳しい成分基準、環境への配慮。そして何より特徴的なのが、髪を別のものに変えようとするのではなく、一人ひとりが生まれ持った髪質を生かすというブランドの姿勢。


今回、新たな集中ケアアイテムが登場するタイミングで行われたブランド発表会を通して、INNERSENSEが考える「これからのヘアケア」を探った。

娘の誕生から始まった、クリーンなヘアケアへの挑戦

INNERSENSEが誕生したのは2005年。
ブランドを立ち上げたのは、ともに美容師としてキャリアを積んできたグレッグとジョアン夫妻だ。


ブランド誕生の背景には、1995年に生まれた娘さんの存在があった。
娘さんの誕生をきっかけに、食べ物や洗剤、日々身体に触れるものに何が使われているのかを、これまで以上に意識するようになったという。

同時に、美容師として日々ヘアケア製品に触れてきたからこそ感じていた疑問もあった。
「クリーンな成分」と「プロフェッショナルな仕上がり」は両立できないのか。
そこから、自分たちが納得できるヘアケアをつくる挑戦が始まった。

発表会で特に印象的だったのが、
「髪質に問題があるのではなく、ヘアケアの仕方に問題があることもある」という創業者の考え方だ。

ストレートにする、クセを抑える、ボリュームをなくす。
これまでのヘアケアには、自分の髪を「修正する」ような考え方も少なくなかった。

INNERSENSEが目指すのは、その反対側。
クセやうねりも含め、その人が持っている髪の個性を理解し、生かしていくことだ。

製品だけではなく、「どんな企業であるか」も大切にする

INNERSENSEが掲げるのは「クリーンビューティー」。

ただし、ここでいうクリーンとは、単に特定の成分を使わないという意味だけではない。
身体への配慮はもちろん、環境、社会、働く人々など、企業活動そのものを含めて考えている。
その象徴のひとつが、2021年に取得した「B Corp」認証だ。


B Corpは、製品単体ではなく、企業の社会的・環境的パフォーマンスや透明性、ガバナンスなどを評価する国際的な認証制度。INNERSENSEでは、そのほかにも環境や動物福祉に関するさまざまな取り組みを行っている。

パッケージについても、再生プラスチックを活用。ただ自然派という言葉で終わらせるのではなく、「長く使われる化粧品の容器として、何がより現実的で持続可能なのか」まで考えながら素材を選択しているという。

「何を入れるか」以上に、「何を入れないか」

INNERSENSEの製品づくりを象徴するもののひとつが、独自に設けている「NO LIST」。
ブランドでは、使用しない成分について厳格な独自基準を設定している。

発表会では、その数は約3,000に及ぶと紹介された。

美容製品では、「こんな美容成分を配合している」という足し算に目が向きやすい。一方INNERSENSEは、何を使うかと同じくらい、何を使わないかも重要と考えている。ヘアケアに必要な機能性を保ちながら、自分たちの基準を満たす処方をつくる。ブランドのものづくりの難しさと、こだわりが感じられる部分だ。

水を45%まで抑えた、高濃度なヘアケア

もうひとつユニークなのが、製品に含まれる「水」への考え方。
一般的なシャンプーは水の割合が多いが、INNERSENSEでは水の含有量を45%程度まで抑え、高濃度に設計しているという。


理由は大きく2つ。

ひとつは、植物由来成分などをしっかり配合すること。
そしてもうひとつは、水資源や輸送時の環境負荷を考えることだ。

そのため、INNERSENSEには独特の使い方がある。
製品をそのまま髪につけるのではなく、まず手のひらに適量を取り、少量の水を加えて乳化させる。
ブランドでは、このステップを「AWAKENING(アウェイクニング)」と呼ぶ。


少量の水を加えながら、手のひらで製品をなじませていく。すると濃度の高い製剤がゆるみ、自分の髪になじませやすい状態になる。
単なる使用方法ではなく、ヘアケアに向き合うためのひとつの儀式として提案しているのも、INNERSENSEらしい。

忙しい毎日の中で、ほんの数十秒。自分の手で水と製品を混ぜながら、今日の髪の状態を確かめる。そんな時間まで含めてヘアケアと考えている。

くせ毛を「直す」のではなく、生かすという選択

INNERSENSEが日本でも相性のよさを感じているというのが、くせ毛を生かすことを提案するヘアサロンだ。
クセがある髪は、キューティクルの状態が均一ではなかったり、水分を保持しにくかったりと、乾燥しやすい傾向がある。そこで大切になるのが、「クセをなくすこと」ではなく、水分を補い、しなやかさを与え、その髪が本来持つ動きをきれいに見せること。

縮毛矯正でストレートにすることも、もちろん一つの選択肢。一方で、「自分のクセを生かしてみたい」という人に、別の選択肢を提示しているのがINNERSENSEだ。これはヘアケアの話でありながら、自分の身体や個性とどう付き合うかという話にもつながっているように感じる。

新作は、髪内部の「結合」にまで着目した集中ケア

今回、新たに登場するのが、ダメージヘアのための集中ケアマスク。


ポイントは、単に髪の表面をなめらかに整えるだけではなく、毛髪内部の構造に着目していること。
髪の約80〜90%を占めるとされるケラチンタンパク質。
カラー、ブリーチ、パーマなどの化学処理や、日々の熱ダメージが重なることで、その内部構造も少しずつ不安定になっていく。肌にはターンオーバーがあるが、髪は一度ダメージを受けると、自ら元の状態へ修復することはできない。

だからこそヘアケアでは、どう補い、どう健やかな状態に見せていくかが重要になる。今回の新製品は、いわゆる「ボンドケア」と呼ばれる発想を取り入れながら、INNERSENSEらしく植物由来成分を使ったアプローチを追求したものだ。

たどり着いたのは、モリンガ由来のプロテイン

その鍵となる成分として紹介されたのが、モリンガ由来のプロテイン。モリンガはインドなどで古くから利用されてきた植物で、「スーパーフード」として耳にしたことがある人も多いかもしれない。

INNERSENSEでは、さまざまな植物由来プロテインを検証。その中で、モリンガ由来タンパク質に含まれるアミノ酸の組み合わせに着目したという。髪への吸着性、毛髪構造のサポート、保湿や柔軟性。そうした要素のバランスから、今回の処方に採用された。

ブランドが目指したのは、ダメージを何かで覆い隠すのではなく、髪そのものを扱いやすく、健やかに見せていくこと。その思想が、新しいマスクにも反映されている。

まず「落とす」。その後に「補う」

今回の発表では、新作のリペアマスクとあわせて、髪の蓄積汚れを落とすクレンジングタイプのマスクも紹介された。


左:(クレンジング)毛髪に蓄積した汚れを落とし根本がふんわり、髪自体がつるんつるんに。


ヘアオイルやスタイリング剤などを毎日使っていると、自分では気づかないうちに髪に成分が蓄積することがある。
いわゆる「ビルドアップ」だ。

例えば、
髪が以前より重く感じる。
シャンプーが泡立ちにくくなった。
トリートメントの効果を感じにくい。
髪が乾きにくい。

そんな変化があるときは、髪に余分なものが蓄積している可能性も。そこで、まず炭やクレイなどを使ったアイテムで髪をリセット。
その後に集中補修マスクを使用する。

取り除いてから、補う。
スキンケアでは当たり前になりつつある考え方を、ヘアケアでも取り入れている。週に一度、自分の髪の状態を確認する時間として取り入れてみてもよさそうだ。

完全ヴィーガンではない。それでも紹介したい理由

VEGAN'S LIFEとして触れておきたいのが、ブランドのヴィーガン対応について。INNERSENSEは、ブランド全体が完全ヴィーガンというわけではない。一部製品にはハチミツ由来の成分が使用されている。

一方で、ブランドの多くの製品ではハチミツを使用しておらず、植物由来成分を中心とした製品開発を行っている。そのため、ヴィーガンのライフスタイルを実践している場合には、ブランド名だけで判断せず、製品ごとに成分を確認して選ぶことが大切だ。
VEGAN'S LIFEでは、「ヴィーガンか、そうでないか」という二択だけではなく、その企業がどのような素材を選び、環境や社会とどう向き合い、これからどんな選択肢を増やそうとしているのかも大切にしている。INNERSENSEもまた、そんな視点から注目したいブランドのひとつだ。

自分の髪を好きになるためのヘアケア

「もっと真っすぐだったら」
「もっとまとまる髪だったら」

髪に対する悩みは、いつの間にか、自分自身の一部を否定することにもつながりやすい。でもINNERSENSEが伝えるのは、髪を別のものに変えるのではなく、その髪のよさを引き出すこと。

クセも、ボリュームも、一本一本違う髪質も。まずは自分の髪を知ることから始める。クリーンビューティーという言葉の先にあるのは、環境に配慮した製品を選ぶことだけではないのかもしれない。自分自身の身体や個性に対しても、無理に直すのではなく、少しやさしい目線を向ける。INNERSENSEのヘアケアには、そんな考え方まで込められているように感じた。

Editor's Note
INNERSENSEは完全ヴィーガンブランドではなく、一部製品にハチミツ由来成分が使用されています。ヴィーガンの方は、購入前に各製品の成分表示をご確認ください。 

https://innersensebeauty.jp/

服部めぐみ

VEGAN’S LIFE編集長

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ヴィーガン検定1級/発酵食品マイスター。美容・食・サステナブル領域を専門とするエディター。生産者やブランドの哲学を伝える取材・編集を行う。「未来に残したい価値を、読者の心に残るコンテンツへ。」をテーマに、プラントベースを軸とした新しいライフスタイルを発信している。

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